カレの愛は増すばかり。

光熱費や水道代を支払ったら、家賃の分なんて残らなかったのだ。


それにしても、まだ滞納して二日かそこらなのに、『考えなくてはいけない』って…。


……いいや、違う。

確かにまだ滞納して日は経っていないけれど、これから先、きっと払えなくなる。


大家さんもそれを分かっているんだ…。


「…お嬢さん?」

「………、」

「お嬢さん!」


月瀬さんの呼び掛けに、私はハッとして顔を上げた。

心配そうに眉を下げた月瀬さんが間近に居る。


「お嬢さん。大丈夫ですか…?」

「ごめんなさい。私…、」


これ以上先の言葉が出てこない。


甘く考えていた。やっぱり、まだまだ子供なんだ。

誰の力も借りないって決めてたのに、結局月瀬さんに家賃を払わせてしまっている。


私、どうしたら…


「お嬢さん。しっかりしてください。」

「え?」


そう言った瞬間、月瀬さんに抱き締められた。


ふんわりと鼻腔を擽る甘めのコロンは、月瀬さんが近づく度にいつも香るもので。

正直あまり好きではない香りだったけれど、この時ばかりはホッとした。


私よりも大きな体に包まれて、髪を何度も撫でられる度に気持ちが落ち着いていく。
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