カレの愛は増すばかり。
「落ち着いて。大丈夫。僕が貴女の傍に居ます。」
「…………。」
「不安にならなくていい。僕が何とかしますから。
一緒に暮らすのが嫌なら、資金の援助だけでもいい。」
「そんなの…っ、」
「だからお願い。僕を頼って。」
ゆっくり体を離すと、月瀬さんは眉を歪めて笑っていた。
『ね?』と不安げに首を傾けて、私のおでこに口づける。
「…どうして、そこまで私に、」
「貴女だからです。貴女が貴女である以上、僕は何があっても貴女の傍から離れません。
例え貴女がどれ程拒もうとも、一緒に暮らすことが叶わなくても。」
「…………それは、つまりストーカーですか?」
じっと月瀬さんの青緑色の瞳を見つめて聞くと、月瀬さんは一瞬フリーズした後、すぐにプッと吹き出した。
「そう、ですね。そう言えば同じことを誰かからも言われました。
確かにストーカーかもしれません。」
『けれどきっと、役に立つストーカーですよ』と、月瀬さんは綺麗にウインクした。
あまりに綺麗に決まったそれに、思わず見とれてしまう。
「と、いうことで僕はそろそろお暇(いとま)します。ホテルを探しに行かなくてはいけませんので。」
「え、あの…」
「…?大丈夫。資金の援助はきちんとしますし、またすぐに来ますよ。」
月瀬さんは瞳を細めて笑うと、私の髪を優しく梳いた。
月瀬さんの手が離れると同時に、指の隙間から髪が零れる。
玄関へ向かう月瀬さんの背中を見送りながら、私は胸がザワザワと落ち着かないのを感じた。
ズルい。
ここまでされて…、これじゃあ私が鬼みたいだ。
だって結果的には、結局私の要求だけ呑んでもらっている。
そんなの…、虫がよすぎる。