カレの愛は増すばかり。
「…月瀬さんっ!」
私の呼び掛けに、月瀬さんは不思議そうな表情で振り返る。
「どうしました?」
私は小さく深呼吸をすると、月瀬さんの方へゆっくりと近づいた。
「やっぱり…、資金の援助だけなんて出来ません。」
「…お嬢さん、まだそんなことを言うんですか?」
「だってそれじゃあ、虫がよすぎるじゃないですか。」
「僕はそんなこと思っていませんよ?」
月瀬さんはそう言うと、困ったように笑う。
やっぱり、悪い人ではないのかもしれない。
ちょっと強引だし突拍子もないことをするけれど、確かに助けになろうとしてくれている。
この人なら、頼ってもいいだろうか。
「月瀬さんが思っていなくても、私の気がすみません。」
「では、どうすれば貴女は僕の好意を受け取ってくれますか?」
「そう、ですね…、」
私は顎に手を当ててわざとらしく考えるフリをすると、すぐに月瀬さんへ視線を戻した。
「今月分の家賃を支払ってくれたのは月瀬さんです。つまり、凄く不本意ですが、月瀬さんにはここに住む権利があります。」
「え…?」
「だからやっぱり…、
こんな所で良かったら、ここに居てください。」
何度も断っている不安から語尾が少し小さくなりつつも、何とか言いきった。
怖ず怖ずと月瀬さんを見ると、その青緑色の瞳をビー玉みたいに丸くして固まっている。
「………月瀬さん?」
「…あっ、す、すみません!
ちょっと、驚いてしまって…。」