カレの愛は増すばかり。
月瀬さんは吃りながらもそう言うと、口元を手の甲で覆い隠した。
「…何してるんですか?」
「いや、顔ニヤけちゃって恥ずかしいので…。
あの、僕の聞き間違えでなければ、今、」
「『ここに居てください』って言いました…。」
こっちまで恥ずかしくなって、何故か少し不貞腐れたような顔で言う。
だってあれだけ嫌がっていたくせに、今更何だっていう感じだ。
けれど月瀬さんはそんなこと全く気にしていないようで、嬉しそうに口元を綻ばせると私を抱き上げた。
「わっ!ちょ…っ、月瀬さんっっ!!
重たいですから、降ろしてっ、」
「いいんですか?!本当に!」
「いいです!いいです!だから降ろしてっ!!」
私の必死の訴えは月瀬さんには通じないのか、月瀬さんはそのまま私を抱き締める。
今まで抱き締められた中で、一番強い力で。
「月瀬さん、苦しい…。」
「だって凄く嬉しくて。やっぱり嘘でしたとか、ありませんよね?」
「ないですよ。」
「では僕は、貴女の傍に居てもいいんですね?」
心底愛しいものを見る目で私を見つめると、月瀬さんはわたしの頬を撫でた。
そんな風に触れられると、私だって何だかドキドキしてしまう。
「お好きにどうぞ。」
そう答えると、月瀬さんは青緑色の瞳を三日月形に細めて私の頬にキスをした。
「あの、お嬢さん?」
「はい?」
「僕のこと、“お父さん”と呼んでくれてもいいんですよ?」
「結構です。」
余計な一言を残して。