カレの愛は増すばかり。
3.5
灰色の空にひらひらと舞う雪。
公園と呼ぶには寂しすぎるこの広場に、一面に広がるのは汚れない純白の絨毯。
この光景、ぼんやりとだけど覚えがある。
あぁ、そうか。
幼い頃に架純(カスミ)さんによく連れていってもらった公園だ。
『上手ね、満ちゃん。』
『…?』
『可愛い兎。良くできてるわ。』
背後から聞こえた優しい声に振り返ると、架純さんが膝を曲げて私を見下ろしていた。
その視線の先には、小さい頃に父に買ってもらった赤いミトンをはめた私の手と、不格好な雪兎。
耳は新緑の椿の葉。
瞳は、まだついていない。
あれ?私…、
『あら、まだ瞳がついていないのね。』
『可哀想に。…ね?』
架純さんの声が男の甘い低音に変わったかと思うと、もう一度振り返る前にパラパラと真っ赤な実が降ってきた。
新雪の上に、美しい赤が不気味な程よく映える。
これは、南天の実…。
『美しいでしょう?まるで鮮血のようだ。』
架純さんが、別人の声で私に問いかける。
私はまだ、振り返ることができない。