カレの愛は増すばかり。
『知っていますか?白い兎の瞳が、どうして赤いのか。』
言いながら、冷たい指先が私の首筋をつっと撫でた。
思わず背筋がゾクリと粟立つ。
違う。これは架純さんじゃない。
『瞳の奥の細かい血管が透けて見えているんだそうです。』
『…っ、』
『では、例えばその兎から全身の血液を抜いたら、』
“はたして瞳は、何色になるのでしょうね。”
彼はそう告げると、私の細い首に手をかけてゆっくりと力を入れた。
少しずつ、呼吸が苦しくなっていく。
声は最初から、恐怖でまともに出ない。
精一杯酸素を求めても、口がパクパクと間抜けに震えるだけ。
そうこうしている内に、意識は段々遠退いていく。
あぁ、私このまま…
視界が徐々に白んできて、全身から力が抜けたように天を仰ぐと、まるで兎の瞳のような濡れた赤が一瞬視界の端に映った。
艶やかでいて、どこか不気味にも感じる美しい赤。
それはただの錯覚だろうか。
それとも、真っ赤に熟れた南天の実?
私はあの赤に、見覚えがある気がする。
嫉妬や憎悪。
私に向けられる明らかな敵意。
それでいて脆弱で儚く、凛と澄んだあの赤に…、