カレの愛は増すばかり。

月瀬さんはわざとらしく顔を両手で覆い隠すと、切なさ一杯にすんっと鼻を鳴らした。


月瀬さんと暮らし始めてから、いくつか分かったことがある。


まず、彼は私に異常に執着していること。

これは何となく最初から分かっていたことだ。


それから、意外と子供っぽいこと。案外口うるさいこと。


そして、結構チョロいこと。


「月瀬さん。顔、見せてくれませんか?」

「……はい。」


私の問いかけに遠慮がちに顔を隠していた手をどけると、月瀬さんはしゅんと眉を垂らしてその美しいマラカイトの瞳で私を見た。


この人、黙っていれば美形なのに…。

なんて残念なんだ。


月瀬さんの手を取って、私も真っ直ぐ彼の瞳を見上げる。


「ぅえ、あ、あの…」


月瀬さんは動揺したように情けない声を漏らすと、頬をほんのり赤く染めた。


「月瀬さん。」

「はいっ。」

「私がどうして今まで学校とバイトを休んでいたと思いますか?」

「え。えっと…」

「はっきり言いますね。月瀬さんのこと、信用しきれていなかったからです。」

「えっ!」


先程まで赤く上気していたその顔は、私の一言で一気に青くなった。


そういえばこの人、表情も割りと豊かだ。

肌が白いから、顔色にすぐ出るのだろう。
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