カレの愛は増すばかり。
クラスでも若干地味目な山内くんは、円香みたいなタイプが一番苦手らしい。
ドンマイ、山内くん。
「てかさぁ、清岡顔色悪くない?本当に体調よくなったのぉ?」
「うん。体調はもう全然。」
そもそも体調不良はただの口実で、学校を休んだのは月瀬さんのことがあったからだ。
鞄の中の教科書を机の中に移していると、不意に円香がひょいっと私の顔を覗き込んできた。
「え。何?」
「ほらぁ、やっぱり。クマ凄い。」
「クマ?」
「だから顔色も悪く見えんじゃん?ちょっと鏡見てみ。」
円香はそう言うと、カーディガンのポケットからコンパクトミラーを取り出して私に差し出した。
遠慮なくそれを受け取って目元を映すと、確かにうっすらと青黒くなっている。
「うわ。ホントだ。」
「クマとか最悪じゃん。マドカだったら学校来ないー。」
「普通クマぐらいで休まないよ。
…あー、でもちょっと身に覚えが。」
「えー?何?」
「いや、最近夢見が悪くてさ。」
月瀬さんが来てからというもの、もうずっと同じ夢しか見ていない。
それも最悪の悪夢だ。
幼い頃、一度だけ大雪が降ったあの日。
架純さんと近所の公園に、雪遊びに出掛けたことがあった。
そんな古い記憶を、最近は毎日夢で見る。
「ふぅーん。どんな?」
「昔経験したことだよ。途中まではそっくりそのまま。
でも、最後は首を絞められて殺されるの。知らない男に。」
「げぇ。何?病んでんのぉ?」
「…そんなことないと思うんだけど。」