カレの愛は増すばかり。
不安に思えば思うほど、時間というのは早く経つものだ。
先程円香が澤口先生に連れて行かれたと思ったら、もう昼休みになってしまった。
因みに円香はというと、勿論1限目が始まる前には帰ってきて、それから昼休みになるまでずっと寝ていた。
そして今も眠そうに欠伸をすると、またも山内くんの席で、短いスカートから伸びる長い脚を組んで寛いでいる。
まるで自分の席だ。
「円香。悪いけど、私澤口先生に呼ばれてるから行ってくるね。」
「えぇー。清岡何したのぉ?」
「円香と一緒にしないで。」
「酷くなぁい?」
酷くないわ。
と、心の中でツッコミながら、私は緊張を沈めようと胸を擦った。
進路指導室の前の廊下は、何となく自分のクラスの教室の前の廊下よりも温度が低い気がした。
足元をひんやりとした空気が一方向へ流れていく。
気のせいかもしれない。
要は気の持ちようだろう。
白い扉を2回ノックすると、中から澤口先生の短い返事が聞こえた。
その返事に応えるように、銀色のドアノブを回す。
「失礼します。」
「あぁ、清岡。まぁ、そこ座れ。」
進路関係の資料が壁に沿って並んでいるこの部屋の真ん中に置かれた真っ白な机に、澤口先生は腕を組んで座っていた。
澤口先生が目配せをした向かいのパイプ椅子に、私も言われた通り腰を下ろす。
「体調はどうだ。」
「もうすっかり良くなりました。」
「そうか…。」