カレの愛は増すばかり。

他愛ない短い会話が、途切れ途切れに続く。

澤口先生も、何かを言い淀んでいるようだった。


おかげで益々気まずい。


「あの、先生?お話って…。」

「あぁ…。いや、…うん。
そうだな。」


えらく歯切れの悪い返答をすると、澤口先生は諦めたようにため息をついて私に向き直った。


「清岡。お前の家が今大変なのは勿論分かっているんだがな…、」

「…?はい。」

「その…、授業料が遅れてるんだ。」


澤口先生は申し訳なさそうに眉を垂らすと、言葉を続ける。


「本来ならこういうことは親御さんに言うことなんだが、お前の場合そういう訳にいかないだろ。」

「…あの、どのくらい遅れているんでしょうか。」

「先月から滞ってる。今月の分も合わせて、2万6千円。」

「2万6千円…。」


ウチの高校は、決して安い授業料ではない。


昔から勉強が苦ではなかった私は、それなりの成績を修めてきた。

そんな私に、父は教育にだけはお金を惜しまなかったのだ。


そんな父のおかげで、私は貧しいながらも奨学金もなしにこの高校に通えている。

いや、通えていた。


先月といえば、父が亡くなったのが先月だ。


それから支払えていないのか…。


いくら父の葬儀や何やらでお金がかかったとはいえ、これは私の考えが足りなかった結果だ。


私、思ってたよりもずっとお父さんに甘えていたんだ…。
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