カレの愛は増すばかり。

「勿論何時でもいいとは言えないが、今すぐにという訳じゃない。
お前の家の事情も、学校はちゃんと考慮しているから。」

「…はい。すみません、ご迷惑をお掛けして。」

「いや…。そんな迷惑だなんて、」


『お前は頑張っているよ』


澤口先生はそう言うと、私の肩を優しく二度叩いた。


私はきっと、周りに恵まれているのだと思う。

けれどやっぱり、その事に甘えすぎる訳にはいかない。


何とかしないと…。


そう決意したその時、放送の始まりを告げるチャイムが鳴った。


≪教員と生徒の呼び出しをします。澤口先生。1年2組の清岡満さん。清岡さんの保護者の方がお見えです。至急職員室まで来てください。繰り返します…≫


放送が終了し馴染みの音が耳に届く頃、私の顔からはサッと血の気が引いてすっかり青くなっていた。


今、確かに“保護者”と言っただろうか。

今の私にとって保護者を自称する人物など、一人しか思いつかない。


澤口先生の方へ目をやると、怪訝な表情で私を見つめている。


「清岡。お前、保護者って…。」

「いや…、その、まだ仮決定です。」


私の返答に、澤口先生は眉間の皺をより一層深くした。





澤口先生と職員室に入ると、案の定そこにはカジュアルなインディゴの襟つきシャツにボルドーのニット、キャメルのカーゴパンツという出で立ちの、派手なブロンドの外国人(のような人物)が、片手にネイビーのPコート持って立っていた。

日本人離れしたその容姿は、無機質で殺風景なこの場では見事に浮いている。


あぁ…、やっぱりこの人か。
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