カレの愛は増すばかり。
私の家は、築40年の2階建てのアパートだ。
母が死んでからは父と二人だけでここに住んできた。
狭くて小さくて、良いところと言えば家賃が安いことくらい。
私はそのボロアパートの前まで送ってもらうと、深々と頭を下げて吉井さんの車を降りた。
古くなって赤茶色に錆び付いたアパートの階段の下には、私が生まれる前からいるらしいお腹の白い黒猫がスヤスヤと寝息をたてて眠っている。
「クロ、ただいま。」
私はその猫に小さな声で一言そう言って、あまり音を建てないように気をつけながらそっと階段を上った。
バイトを終えて帰ってくるとどうしても遅い時間になってしまう為、私はいつもこうしている。
階段を上りきってすぐの茶色い木目調のドアの前に立つと、私はリュックから鍵を取り出してドアノブの鍵穴に差し込んだ。
「ただいま。」
つい癖になっているのか、中に入って無意識にそう言うと、短い廊下に虚しく響く。
狭い狭いと文句を言っていたが、父が死んでからはこの部屋も何だか広く感じるようになった。
今度はそれが、少し寂しい。
私は荷物をリビングに置いてからお風呂場に直行すると、シャワーを浴びてからすぐに寝る準備を始めた。
どうせ起きていても何もすることはないし、何より寂しい気持ちがどんどん膨らむから、私はバイトから帰ってきたらすぐに寝るようにしている。
明日は土曜日で学校は休みだし、バイトも昼からだからいつもよりゆっくり寝よう。
そう心の中で思いながら、私はだんだん眠りに落ちていった。