カレの愛は増すばかり。
しかし男はそれに焦ったのか、慌てて半身を滑り込ませると私がドアを閉めようとするのを阻止してくる。
だけど私だってここで引き下がる訳にはいかない。
怖いものは怖いのだ。
私がそれに構うことなく更に力一杯ドアを閉めようとすると、ついに男は声を上げた。
「痛い痛い!ちょっ…イタッ、
つ、月瀬です!清岡柊一さんの友人のっ!月瀬類ですっ!!」
「……へっ?つ、月瀬さんっ?!」
どこかで聞いたことのあるその名前に、一瞬ドアを引く力が緩む。
男はその一瞬の隙をついて、ドアを今度は自分の方へ引き返すと、その拍子に私はバランスを崩して前につんのめった。
「わっ、」
「…っと、大丈夫ですか?お嬢さん。」
ふわりと支えられたその体に、『あぁ 入られてしまった…』とぼんやりと思う。
だけど耳に響いたその低音は心地好いもので、不思議と嫌な気持ちはしなかった。
改めて体を起こして、その人の顔を見上げる。
細くて艶のあるペールブロンドの髪。
まるで白磁のような白くきめ細かい肌に、髪とお揃いのブロンドの長い睫毛で縁取られた、深い青緑色の瞳。
すっと鼻筋の通った格好のいい鼻は高くて、その様は日本人離れしている。
そして、この全身真っ黒の変な格好。
これらを総合してみると、私はこの男が自ら名乗ったのも忘れて、ある一つの予想が頭を過ぎった。
「…コスプレ外国人?」
「えっ……、」
少し冷たい印象を受けるその整いすぎた顔が固まるのを見つめながら、私は先程聞いた名前を思い出して勝手にその予想を打ち消す。
いや、さっき月瀬類って言ってたし日本人か。
ていうかその名前、どっかで聞いたような…、