カレの愛は増すばかり。
2
冬の朝独特のひんやりとした空気が、起き抜けの私の頭を徐々にはっきりしたものにしていく。
リビングにかけてあるキャラクターものの時計が指すのは、6時を少し過ぎた頃。
土曜日のこんな朝早くに、私は一体何をしているんだろう…。
やたらキラキラしたオーラを放ち、ピンと背筋を伸ばして正座している月瀬さんと名乗る人物に、私は水の入ったヤカンを火にかけながらぼんやりと思った。
うちの古い畳のリビングに、明らかに似つかわしくない西洋風の上品な人。
確かに月瀬さんだと名乗ってはいたものの、余りに私の想像とかけ離れていて少し、いや、かなり驚いている。
父に来ていた月瀬さんからの手紙の何通かに目を通す内に、月瀬さんが父の大学の同級生だということが分かった。
けれど、その割には何だか若すぎる気がする…。
父の年齢は38歳。それでも見た目に関しては、30代前半に見られることもしばしばだった。
そんな父と比べても、月瀬さん、と名乗る人物の見た目は随分若い。
大体20代。行ってて20代半ば。
明らかに計算が合わない…。
いつの間にかじっと見つめすぎていたのか、ふとこちらを見た月瀬さんと目が合った。
瞬間、ニッコリと人の良さそうな笑顔で笑いかけてくる。
……胡散くさ。
「あの、コーヒーでいいですか?それか紅茶もありますけど。」
「あぁ、どうぞお構い無く。」
「いえ、そういう訳には…」
「では、お嬢さんの生き血で。」
「………は?」
ポカンと思わず間抜けな顔で聞き返すと、月瀬さんはケラケラと笑った。