桜琳学園(仮)
新生活のはじまり
「さて、まずは、入学おめでとう。この学園に来てくれて嬉しいよ」
あー。本当に理事長なんだ。近江の会長としての顔でも、お母さんといた時に何度かみせた父親の顔でもない。こうやって切り替えが出来るとこは人として、社会人として尊敬できる。
「ありがとうございます。1つお聞きしたいんですが、母から学費は一切必要ないと聞いています。それは私があなたの孫だからですか?」
ずっと気になっていた。ただの知り合いだからってだけで学校に渡さなければならない、いわば契約料のようなものが一切免除されるなんて…と。普通に考えたらありえないことだ。
「残念だが私はそこまで優しくない。たとえそれが血のつながった孫だとしても。何のメリットもなければな…」
どういうことだろう。その言い方じゃ、まるで私がこの学校にとってメリットがあるみたい。どう考えたってないでしょう。
「多少の贔屓はあるがな」
顔を崩してはは、と笑うおっさ…理事長に冷たい目を向けてみた。
「おい、おい。そんな目で見るでない。一応メリットがある。成績だよ。君の知能がほしいと思ったんだ」
「?これといって目立って成績が良いわけではないですよ」
そう言い終わるか終わらないかのうちに竹中さんが大きな封筒を私の前に置いた。
「それは君が受けた入学試験の結果だよ。見なさい」
封を切り中身を取り出してみる。数字やらグラフが書き出されている。
(全合計…497点。ありら。3点どうしちゃったよ)
「数学でしくじったか」
数学の欄だけ97点。
(ん?もしかして私って頭いい?まさかの天才?!って、一応勉強したんだから当然か。)
「その数学だが、一応合っていたんだが単位を書き忘れていただけだ」
(うーわー。もったいな)
「これだけ優秀な生徒だ。何が何でも手放したくなかったのだよ。何せ創立以来の初めてだからね。こんなにも高得点をたたき出した人は」
うっそん。桜琳なら満点出した人くらいいそうなのに。
「これで問題は解決できたかな?」
いまいち腑に落ちないけど、こくんと首を振った。
「納得して頂けたところでこれからのことについて少し話しておこうか」
背もたれに預けていたのを少し前かがみになり、膝の上に手を組んで乗せる姿勢になった。