そよ風に包まれて。
まるでそよ風
しばらくして、学校に着いた私は、正門の近くに貼られた紙に目をやる。
新しいクラス表か・・・何組だろう・・
沢山の名前がパソコンで打たれていて、正直見つけにくい。
だんだん下に目線をずらしていくと 天川椎那 私の名前だ。
「えっと・・・2-3・・か・・」
と私は呟いた。すると、すぐ後ろから声がした。
「君、来るの早いね。委員会か何かなの?」
そこに居たのは、顔が整っているおとなしそうな男子生徒だった。
男子に話しかけられたのが久しぶりだったということもあるが、いきなりということもあって、すぐに返事が返せなかった。
でも、このまま黙り続けるのは相手に失礼だ・・。私は落ち着いて口を開いた。
「い、いいえ。今日は天気がいいし。気分で・・ね」
実際そんなのこれっぽっちも思っていない。軽はずみの嘘にすぎない。
そんなこと知るはずもない彼は
「そうなんだ!確かに今日天気良いもんね。俺は学級委員で仕事があって;」
私がへ~と呟くと彼は時計を見て少し慌てた表情で
「あっ!;じゃあ俺はこれで!同じクラスだと良いね^^」
そう言って、ふんわりとした髪を左右に揺らしながら校舎側へと走って行った。しかし、校舎の入り口付近で足を止め私の方に振り返った。
なんだろうと見ていると、彼はニコッとほほ笑んだ。
私は不覚にもドキッとしてしまい気がついた時には彼の姿はもうなかった。きっと校舎に入ったのだろう
名前も知らない彼の笑顔
それはまるで・・・・
爽やかにふくそよ風のようだった。