イジワル社長と身代わり婚約者
第1章 眠り姫にお目覚めのキス
目覚めると、私は誰かの腕の中にいた。
「おはよう」
と唇にキスをされて、ぼんやりと焦点の合わない目を擦る。
抱きしめられている感触はどう考えても裸だ。秋口の肌寒さに身をよせるように密着している。
つむじにもう一度唇を寄せられて、熱いため息が落ちる。
彼の肌からはムスクやアンバーのようなセクシーな香りがする。それから……男らしい喉仏や、セクシーな鎖骨が目に入った。
待って……私、どうして……。何がどうして、こうなっているんだっけ?
こんな風に抱き合う前の記憶がない。
ただでさえ鉛のように重たい身体は、この美麗なカラダに組み伏せられて動けない。ただ声の主の顔だけは、だんだんとはっきりしてきた。
私の上に覆いかぶさって、頬を両手で包んでじっと見つめてくる彼――どう見ても、社長にしか見えない。
艶やかな黒髪からのぞかせる、意志の強そうな眉の形、跳ねあがった長い睫毛、透きとおった瞳はまるで黒曜石のように綺麗だ。
これが夢じゃなかったら何?
「……どうして、社長が」
美しい面立ちに見惚れていると、ゆるゆると腕を離された。すると密着していて見えなかった部分が露わになる。
私の目に飛び込んできたのは、逞しい大胸筋や、美しく割れた腹筋……その下は……何も身につけていない!
というか私は!? 思わずパッと自分の胸を見て、慌ててシーツを引っ張りあげた。
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