イジワル社長と身代わり婚約者
「なんでっ」
「まさか、忘れたなんて言わせないよ」
彼の美しく象られたセクシーな唇が私の耳に近づき、誘うような艶っぽい声で囁く。その声は、私の鼓膜を震わせるばかりか、子宮のずっと奥までをぞくっと刺激した。
生あたたかい彼の唇はそれから私の耳の輪郭をなぞるようにやんわりと食んで、首筋をたどるように這っていく。
「ひゃっ……んっ……」
張りついていく粘膜の感触に、ぞくん、ぞくんと感じる度、私の身体は小さく震えた。
「たっぷり寝て、機嫌が直っていたらいいと思ったけど、そうじゃないのか?」
どうして、庶務課の地味な存在である私が、憧れてやまなかった黒河《くろかわ》社長の腕の中にいるの?
「待って下さい。何をおっしゃっているのか、分からなくて……どうして、こうなったのかも混乱していて」
「まだそうやってごまかす気なのか? なら、たっぷりお仕置きしないとね」
再び唇を塞がれると、遠慮なく彼の舌が割り込んできて、私の口腔内を貪っていく。
「……んっ……んんっ……!」
彼の胸は見た目どおりに逞しく、抗えどびくともしない。キスはとても滑らかに絡まり、私のぼやけた記憶を曖昧にかき混ぜてゆく。
耳の下に支えるようにしていた彼の手のひらが、するすると落ちていき、私の胸をやさしく掴んで、形が変わるぐらいまで揉みしだく。
乳房の奥にまで伝うような愛撫。その上、彼の指の腹で頂きを転がされて、繊細な快感がざわっと湧きあがり、脳を刺激した。