イジワル社長と身代わり婚約者

「ん……はぁっ……、待ってっ」

 やっとの思いで唇を離すと、黒河社長は飢えたような獰猛な瞳を向けた。

「そんな目をして。朝はしたくない方じゃないだろう?」

 なんて艶っぽい瞳をするのだろう。吸いこまれてしまいそうな眼差しで、私を魅了する。
 
 ドキンドキンと鼓動が速まっていく。整理のつかない脳は、くらくらとのぼせてしまいそうになっていた。

「社長……」
「二人きりの時は、名前を呼ぶ約束だろう?」

 そんなの知らない。分かることは、私がずっと片想いしていたことだけだ。

 ただ通り過ぎるだけでドキドキして、偶然乗り合わせてしまったエレベーターでは手に汗を握って、目と目がたとえ合わなくても、見ているだけでとろけるくらい幸せだった。

 そんな憧れの黒河社長に私が抱かれているなんて。こんなの現実にあるわけがない。

 整理しようとする私の思考を奪うように彼は、私の胸をもみしだき、興奮して硬くなった頂きを指の腹で執拗に転がし、さらに唇で挟んだり吸ったりして……針のような快感はつぎつぎに私を乱していった。

「あっんっ……社長、ダメ……です」

 自分でも驚くくらいの甘くやるせない声が漏れる。シーツを引っ張りあげようとする手はあっけなく阻まれ、彼の大きな手に掴まれた。

 両手をそれぞれ彼の手に押さえつけられ、二人の胸はよりぴったりと密着し、互いの鼓動がドキドキとするのが伝わってくる。
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