記憶の向こう側




「そろそろ帰ろうか。」




ある程度お腹が落ち着いて、勇樹はおもむろに椅子から立ち上がった。




「うん。」




私も勇樹に続いて腰を上げた。





私たちはファミレスを出て、帰路についた。




辺りは夕暮れで暗くなりかけていた。




紫からオレンジに変わっていくグラデーションの空色が、とても綺麗だった。





「あっ…。」



「どうかした?」




私の上げた声に、勇樹は少し驚きながら尋ねてきた。



「え、あ、…星が出てるなぁって思って…。」




何か、私一人が感動してしまった気がする…。




けど、勇樹も一緒に私の見ている方向を見上げてくれた。




「ほんとだ。俺、普段空なんて見上げないからな。久しぶりに見た気分する。」



「私は…、ずっと空ばかり見てるような気がする…。」




何故か、そんな言葉が私の口からポロリとこぼれた。





< 108 / 377 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop