記憶の向こう側
「そろそろ帰ろうか。」
ある程度お腹が落ち着いて、勇樹はおもむろに椅子から立ち上がった。
「うん。」
私も勇樹に続いて腰を上げた。
私たちはファミレスを出て、帰路についた。
辺りは夕暮れで暗くなりかけていた。
紫からオレンジに変わっていくグラデーションの空色が、とても綺麗だった。
「あっ…。」
「どうかした?」
私の上げた声に、勇樹は少し驚きながら尋ねてきた。
「え、あ、…星が出てるなぁって思って…。」
何か、私一人が感動してしまった気がする…。
けど、勇樹も一緒に私の見ている方向を見上げてくれた。
「ほんとだ。俺、普段空なんて見上げないからな。久しぶりに見た気分する。」
「私は…、ずっと空ばかり見てるような気がする…。」
何故か、そんな言葉が私の口からポロリとこぼれた。