記憶の向こう側
piece5:恋心
二人で歩く帰り道。
私は歩幅を合わせてくれながら隣を歩く勇樹に話し掛けた。
「勇樹は…、生まれてからずっとここで育ってきたんだよね?」
勇樹が実際に働いている場所を目にして
勇樹が私のために作ったご飯を口にして
私は更に勇樹の新しい一面を知った気がする。
「ああ。まあ、ここしか知らないってのもあるけどな。」
「そう…」
「でも仕出屋の親を見てて、俺の居場所はここしかないと思ってきてたし、これ以外の道を考えたことはないなぁ。」
照れ臭そうに答えていたけど、自分のことすら分からない私には、そんな勇樹が輝いて見えた。
「なんか、かっこいいね!」
「そおかあ?何も考えてないけどな。」
よく晴れた夜空だった。
街中だから見える星は少ないけど、何だか私を勇気づけているように見えた。
「お前は…?」