記憶の向こう側
それから梓さんと少し話していると、呼び出しがかかった。
私はまだ話したいことがあって名残惜しかったけど、診察室に急いで入った。
「コロ…だっけ?犬の一件から状況が動かなくなったなぁ…。」
島川先生はカルテを見て、難しい顔をしている。
「まあ、生活に支障が無くやってるみたいだし、戻らないならそれでいいかもしれないけど…」
島川先生は不意に窓の外を見て、再びこちらに向き直った。
「今でも思うことある?記憶を戻したいって…」