記憶の向こう側
「…叶恵ちゃん!すごい騒ぎになってるわよ。どうしたの?」
静かな病院に響き渡った呼び声と、私に駆け寄ってきた足音。
その音の響きがすごかったみたいで、誰もが私達の方を向き、ざわざわと騒ぎ始めていたようだった。
その騒ぎを見かけた梓さんが近付いてきた。
「梓さん。…あの、この人が…」
私は彼から強引に離れて、梓さんに助けを求めた。
誰か分からない人に肩をつかまれたわけなのだから。
「…あなたは?」
梓さんはき然とした態度で彼に尋ねた。