記憶の向こう側
彼はこんな騒ぎになるとは思っていなかったみたいで、しどろもどろで話し始めた。
「お、俺は…山下敬太(やました・けいた)で、あの…」
「事情は別室で聞くわ。私はここの看護師の浜田梓。とにかく、ここは病院だから…」
「すみません、騒ぎになってしまったようで。」
やっと状況を飲み込んだ彼は、低姿勢になって謝った。
「いいのよ。こっち来て。…叶恵ちゃんも。」
梓さんに誘導され、使われていない部屋に場所を移し、改めて『山下敬太』さんに話を聞いた。