記憶の向こう側
「すみません、俺、彼女が杏子だと思って、つい興奮してしまって…」
山下敬太さんは、反省しきりの様子で下を向いて話した。
「『杏子』って…?」
梓さんが落ち着いた口調で彼に尋ねる。
「幼なじみです。家が近所で、高校までずっと同じ学校で、……本当に杏子そっくりなんです。…えと、あなたの名前は…何でしたっけ?」
「田島叶恵といいます。」
私はニコリともせずにそう答えた。
「あ…田島さん。本当に失礼しました。」