記憶の向こう側




「すみません、俺、彼女が杏子だと思って、つい興奮してしまって…」




山下敬太さんは、反省しきりの様子で下を向いて話した。




「『杏子』って…?」




梓さんが落ち着いた口調で彼に尋ねる。




「幼なじみです。家が近所で、高校までずっと同じ学校で、……本当に杏子そっくりなんです。…えと、あなたの名前は…何でしたっけ?」



「田島叶恵といいます。」




私はニコリともせずにそう答えた。




「あ…田島さん。本当に失礼しました。」





< 175 / 377 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop