記憶の向こう側
piece2:新しい私へ
「田島さん!次はこっちの部屋帰ったから片付けてぇ!」
「はい!!!」
退院から10日
私はとある旅館で、住み込みで働いていた。
まだ働き始めたばかりで、要領が分からないから怒られてばかり。
なおかつ、常に着慣れない着物姿だから、休憩の度にどっと疲れが出てくる。
でもお金も身寄りも、自分自身の記憶すらもない私を全て受け入れて雇ってくれた、この旅館の女将さんには本当に感謝している。