記憶の向こう側
「叶恵ちゃんも、もう少し仕事のやり方を覚えれば、この旅館にとっての戦力になるわ。」
やっと仕事が一段落して。
美しい和服姿の女将さんが私に素敵な笑顔で話しかけてくれた。
戦力…。
認めてもらえてるってこと?
「ありがとうございます!」
私はまだ仕事の時のテンションで、大きな声を出しながら深くおじぎをした。
すると、女将さんはすっと私の前に封筒を差し出してきた。
「はい、今月分の給料よ。叶恵ちゃんは月の途中から来たから、生活の足しになるか分からない額だけど…」
うそ…?
もうお金、もらえるの?
「え…、お給料…。女将さん、ありがとうございます!!」
私はまた、今度はさっきより深くおじぎをした。
頭を低くした私に、優しい女将さんの声が降ってきた。
「常に元気よく頑張ってね。それが叶恵ちゃんのいいところだから。」
「はい!!」