記憶の向こう側
梓さんが部屋から出ていき、勇樹と二人きりになった。
…私は、ここに運ばれる前のことを覚えていた。
鮮明に。
「叶恵…。今、大丈夫か?目覚めたばかりでごめん。説明させてくれ。」
勇樹が話を切り出した。
何のことなのか、予想がついた。
嫌だ!
聞きたくない…!
私が話をさえぎろうとした瞬間。
「田島さん!大丈夫ですか!?浜田さんから電話で聞いて…」
ものすごい勢いで病室のドアを開ける音がした。
私の代わりに勇樹の話をさえぎった人物。
私はその人の顔を見て、ごく自然に名前を口にしていた。