記憶の向こう側
「敬太…?なんで…?」
「え…?」
私の言葉を聞いて、勇樹が驚いた声を出した。
「今、『敬太』って…?」
敬太も驚いていたけど、嬉しそうな表情にも見えた。
…そう。
私は、全てを思い出した。
自分の本当の名前、生い立ち…、失っていた記憶の全てを。
「私の幼なじみの敬太…でしょ?」
「杏子…?思い出したの…?」
敬太…、泣きそうになってる。
…心配させたね。
「敬太、ごめんね。ずっと私、思い出せなくて…。」
「杏子、嬉しいよ!ありがとう!」
敬太が泣き笑いしながら私に近付いた、その時。