記憶の向こう側





しばらく、前に受けたのと同じような質問をされた。




質問が終わり、島川先生はカルテとにらめっこしながら話し出した。




「うーん…。これはかなり思い出してるなぁ…。もうちょっと精密に検査しないと分からないけど、記憶をなくす前の記憶も、なくした後の記憶もしっかりしているみたいだし。事故のおかげで戻ったかな…?…痛むところは?」



「右腕と右足が…。」




私は痛む箇所を指差した。




島川先生は、私が指差した所を少し触りながらうなずいて言った。




「うん、そこを打ったみたいだったからね。特に骨折もしてないし、すぐに治るよ。」



「ありがとうございます。」




良かった…


大したことなくて。




私は横になりながら、島川先生に軽く一礼した。





< 227 / 377 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop