記憶の向こう側
しばらく、前に受けたのと同じような質問をされた。
質問が終わり、島川先生はカルテとにらめっこしながら話し出した。
「うーん…。これはかなり思い出してるなぁ…。もうちょっと精密に検査しないと分からないけど、記憶をなくす前の記憶も、なくした後の記憶もしっかりしているみたいだし。事故のおかげで戻ったかな…?…痛むところは?」
「右腕と右足が…。」
私は痛む箇所を指差した。
島川先生は、私が指差した所を少し触りながらうなずいて言った。
「うん、そこを打ったみたいだったからね。特に骨折もしてないし、すぐに治るよ。」
「ありがとうございます。」
良かった…
大したことなくて。
私は横になりながら、島川先生に軽く一礼した。