記憶の向こう側
カルテに軽く記入した後、急に島川先生は真剣な表情になり、私にこう言った。
「とにかく…、話をしてくれるか?」
「え…?」
話…?
少し首をかしげた私を見た後、島川先生は勇樹、梓さん、敬太の順に一人一人の顔を見ながら更に続けた。
「この病室に集まっているみんなも聞きたいはずだ。君が何者なのか…。私も君の記憶がどれくらい戻っているのか確認したいしね。君が『田島叶恵』になる前のことを教えてくれ。」