記憶の向こう側
「杏子、どうかしたの?具合悪い…?」
走ってそのまま教室に帰って自分の机に突っ伏していたら…
同じクラスの親友、秋本絵里奈(あきもと・えりな)の、心配そうな声が聞こえた。
私はそっと顔を上げて、作り笑いをした。
「うん、大丈夫。絵里奈、次の授業何だっけ?」
「古文。やばいなぁ。私、当てられそうなのに、現代語訳してないし…」
大きなため息をついた絵里奈は、ゆっくりと窓の外に目を向けた。