記憶の向こう側
ある日
私は面接に行った旅館で、やっぱり不採用と言われ、がっくりしながら帰ろうとしていた。
その時、私の姿がたまたま『業務研修』という名目でその旅館に来ていた、今の旅館の女将さんの目に留まったらしかった。
出ようとしていた旅館のロビーで、人目を引きそうな和服美人に声をかけられた。
「うちで働いてみない?」
「え…」
その女性…つまり、今の女将さんは、にっこり微笑んでいた。
「素人みたいだけど、あなたには素質がありそうだわ。磨けばきっと輝く。」