記憶の向こう側
「勇樹についていくことも、もちろん考えた。だけど私は、もう敬太を手離したくない。」
横目で敬太の様子を見ると、敬太はホッとしていたようだった。
「このまま勇樹についていっても、私の親と敬太の仲は戻らない。私も父親とはあれからずっとぎくしゃくしてたし…、そんなの、もう続けたくないから…。」
私がそこまで言うと、梓さんが口を開いた。
「叶恵ちゃん。勇樹くんを選ばなかったのは…、私が原因?だったら謝るわ。そして、勇樹くんとは何もなかったって誓うわ。だから…」
私は、泣きそうになって焦りながら必死に訴えかける梓さんを制して、静かに首を横に振った。