記憶の向こう側




「私は、生まれたままの私で生きたいだけです。『松野杏子』として…、自分に素直に生きたい。」




私は周りを見回した。




私、これだけの人に支えられて、本当に幸せだった。




最初、一人で生きていくって意地張ってたけど、結局は誰かに支えてもらってたんだね。




「勇樹も梓さんも嘘をついてないって分かるし、『田島叶恵』の私をたくさん支えてくれた。そんな恩を踏みにじって申し訳ないけど…。」




私が話し終わらないうちに、勇樹が口を開いた。




「そんなことは、気にするな。叶恵が決めたことだろ?」




勇樹の顔は、本当に辛そうだった。




ごめんね、勇樹…。




「そうよ。叶恵ちゃんが元気に自分の人生を歩んでくれるなら、私は嬉しいわ。」




梓さんも涙ぐみながら、そう言ってくれた。





< 360 / 377 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop