記憶の向こう側
「私は、生まれたままの私で生きたいだけです。『松野杏子』として…、自分に素直に生きたい。」
私は周りを見回した。
私、これだけの人に支えられて、本当に幸せだった。
最初、一人で生きていくって意地張ってたけど、結局は誰かに支えてもらってたんだね。
「勇樹も梓さんも嘘をついてないって分かるし、『田島叶恵』の私をたくさん支えてくれた。そんな恩を踏みにじって申し訳ないけど…。」
私が話し終わらないうちに、勇樹が口を開いた。
「そんなことは、気にするな。叶恵が決めたことだろ?」
勇樹の顔は、本当に辛そうだった。
ごめんね、勇樹…。
「そうよ。叶恵ちゃんが元気に自分の人生を歩んでくれるなら、私は嬉しいわ。」
梓さんも涙ぐみながら、そう言ってくれた。