記憶の向こう側



「分からないんです…」





やっと出てきた、小さく消えそうな声。




そんな声でも、看護師さんの耳にはちゃんと届いていたようだった。




でも、私の言葉の意味を認識した途端、その穏やかな顔が凍りついた。




「え…、分からないって、検査では脳に異常は見られなかったはず。…先生呼んでこなきゃ!」




看護師さんがただならぬ顔つきになって、急に焦りだした。




そして…




そのままバタバタと走って、部屋を出て行った。





< 4 / 377 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop