記憶の向こう側
「私服なんか着て、どこ行くんだよ?仕事じゃないのか?」
「休暇をもらったんです…。…けど…。」
私は急に声をかけられて、驚いてしどろもどろになりながら答えようとした。
「うん。…けど?」
「行くあてが無くて…」
すると、「ゆうきくん」は思い付いたように言った。
「実家は?しばらく帰ってないんじゃないのか?」
「え…、実家…。」
私は黙り込んでしまった。
そりゃあ実家に帰れるものなら帰りたいけど、私は実家の場所すら思い出せない。