ｓｑｕａｌｌ

未練、とかよく言うけど。

私と佐野の間には、未練が残る程の出来事も、思い出もない。

佐野の記憶に残ってすらいないように。
ただ私一人が、佐野を見てただけで…。


｢……………｣


なんだか。
そう考えると、つくづく。
この恋に、


“意味なんてあったんだろうか”


って。

虚しく感じてしまう。

なのになぜか、こんなに囚われていて。
きっと惣一のことも、どこか不安にさせてる…。

昔の恋だから。
ほんとにお互いが、知らない者同士だったから。
どこかその恋を美化して、こんなふうになってしまってるのか。

だからこそ私は、


―あんなに佐野のことを好きになった…？