squall
それで、私の中の何かが変わったわけじゃないけど。

なんだろう。
誰かに佐野の名前を口にしたことで。
ちょっとだけ、楽になったような気がして。


「それじゃあ、またね。もうちょいで、仕事も落ち着くと思うから」
「あ、はい。ありがとうございます。ごちそうさまでした」


佐野サンと会えて、


―良かったのかな…


感じながら。
私は佐野サンと別れた。

でも…。
それは、佳世が佐野サンを断ったことも、多分、大きくて。

楽になったような気がしたところで。
なんの解決もしていないんだと。


「………………」


言い聞かせながら、私は会社に戻った。

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