squall
わからなかった。
時々、夢は見てたけど。
惣一とつき合い始める前から、私の中では昔のことで。

惣一とつき合ってからは、思い出すのは夢を見た時くらいだった。

私の中の。
ずっとずっと、奥底にしまわれていた人。

惣一は、フッと、寂しげに苦笑を浮かべると。


「もう、半年以上、前だったかな…」


私を責めるふうでもなく、


「式場を予約しに行くちょっと前」


あくまでも優しい口調で。


「萌。泣いてたんだ」
「えっ…?」
「寝言をつぶやきながら」
「寝言…?」


ポツリポツリと、


「さの…って…」
「!」


話し始めた。


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