squall
「ただ。萌を失ないたくなかった。繋ぎ止めておきたかった。だから。俺は俺に、出来ることをした。式を1年後にしたのも。1年あれば、萌の気持ちを俺に向けられるかもしれないって思ったんだ」
「――――――」


いったい。
どれだけの想いを、ずっと一人、抱えていたんだろう。


「でも…。ダメ、だったな…」
「えっ…?」
「琉太と会わせた時。萌も琉太も、動揺した感じはなかったし。内心、ホッとしたけど。まさか、弟の方だったとはな…」
「惣一、それは…!」
「俺は萌の。唯一の存在にはなれなかった」
「待って、惣一。私は…!」


心臓がバクバクして、苦しくて。


「萌は俺を。失いたくないって、思ったこと、なかったろ?」
「ある。あるよ!」


声を出すのも。
苦しかった。

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