squall
まぁ、佐野は気になんかしてないんだろうけど…。

とりあえず、いつまでも俯いてんのもなぁ、思って。

見てることに気づかれたくはないけど、見なきゃ見なかったで後悔するのは目に見えてたし。

不自然には見えないように。
私は顔をあげた。

瞬間。


―とくん…


佐野の姿が入ってきて。

切ないけど、私の視線に佐野が気づかないおかげで。
けっこう普通に、凝視、出来ちゃったりして。


「……………」


うつ向いてるせいで、伏し目がちに見える佐野の表情。


―貴重だなぁ~…


思わず頬がゆるむ。

同じクラスにいたなら。
きっと、珍しくもない表情なんだろうけど。
私は授業中の佐野を見ることはできないし。

ノートとってる所とか、授業中にあくびしてる所とか。
当てられて答えたり。
前に出て黒板に書いたり。
その黒板に書く字が、キレイとか汚いとか(笑)

カノジョじゃなくても、見ることができる何てことない日常の佐野を。

ただ、いまほんの少し見られただけで。


―知りたい


思いが込み上げてくる。


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