甘い罠
第一章 出逢い
心地よいはずのバスの振動が、不快なものに変わろうとしている

瑠璃はパタンと本を閉じた
目を瞑り、ゴクリと生唾を飲み込む

バスの中で本を読めば、具合が悪くなるのは目に見えている
しかし瑠璃は、続きが気になって仕方なかった推理小説を持ち込んでしまった

外気に触れたいと思ったが、他の乗客のことを考えると、窓を開けるわけにはいかない
瑠璃は窓の外に目を向けた
とっくに日の暮れてしまった街並みは、急に瑠璃の心を寂しくさせる

真っ黒な車窓に映る瑠璃は、綺麗にメイクされていた
これから起こるかもしれない、ちょっと楽しい想像を掻き立て、瑠璃は寂しさを払拭しようとした
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