甘い罠
学生の頃、こんなことがあった

同じグループで仲良くしていた加奈子に、彼氏が出来た
1つ上の先輩で、サッカー部のエースだった

顔もかっこよくて、密かに思いを寄せる女の子も少なくなかった

初めは加奈子も、単なる興味本位だった
しかし、積極的な加奈子はどんどん彼との距離を縮めていった

毎回の練習や試合を見に行き
お弁当の差し入れや、タオルやリストバンドなど、気の利いたプレゼント攻撃

「最初はただ追いかけてるのが楽しくてさ。。

でも先輩、いっつも嬉しそうに笑ってくれて、本当優しんだよねぇ



本気になった加奈子は、切々と先輩への思いを瑠璃達に打ち明けた

その時、誰よりも盛り上げ、励ましたのは碧だった

「告白しなよ。
今までこんなに尽くしてきたんだもん。
絶対上手くいくよ!

加奈子可愛いんだから自信持って!」

碧は加奈子の肩を叩き、大袈裟なほど加奈子を持ち上げ、その気にさせた


「そうだよ、うまくいくよ」

瑠璃は碧の勢いに合わせ、全く思ってもないことを少し小さな声で言った

「うん、大丈夫だと思う」

そばにいたサキも、自信なさげに言った


加奈子とエースの先輩が付き合うなんて、到底無理だと瑠璃は内心思っていた

きっとサキも同じように思っていただろう

だから、絶対上手くいくよ!と強く後押しする碧が不思議だった




しかし数日後、加奈子とエースの先輩は本当に上手くいってしまった

加奈子のように、積極的にアプローチする女の子はたくさんいたのに、エースの先輩は、快く加奈子の気持ちを受け入れた

話を聞いた瑠璃とサキは、大はしゃぎで碧に報告した

奇跡的な展開に興奮し、まくし立てるように碧に話した

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