甘い罠
くたびれてきたスウェットの上下のまま、パイプ椅子に腰を下ろす

深く煙を吸うと、頭がクラクラした


友達や親が知ったら卒倒するだろう

自分らしくないことをしている感覚が、なんとなく心地よくもあった

ゆっくり流れていく煙を見つめながら、瑠璃は木村のことを思った

木村はタバコを吸わなかった

彼の前で吸うことは絶対ない

タバコを吸わない人は匂いに敏感だから、木村と付き合うことになったら止めよう

そんな先走ったことを考えていた


瑠璃は何か閃いたようにタバコをもみ消し室内に戻った

まだベッドに投げ出したままの携帯を開き、メールか着信がないかチェックする

ひょっとしたら木村から連絡がきてるかもしれない、と思ったのだが、取り越し苦労だった

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