甘い罠
瑠璃は、何か木村の力になりたかった

そうすることで、より関係を深められたらと思ったのだ



木村は少し自信なさげに喋りだした


「実は俺…

あの事故以来、ちょっと記憶が曖昧なとこがあるんだ

記憶喪失ってゆうと大袈裟だけど…

退院してから、なんか腑に落ちないってゆうか…

あれ?って思ったりすることがよくあって」


木村の話が、また意外な方向からきたので、瑠璃は面食らった


「事故のことじゃなくて、他のことも忘れてたりするんですか?」

瑠璃の問い掛けに、木村はため息をつくように頷く

「だからさっき言った、転落した時に誰かいたっていう話も…

実は警察にも言ってないんだ

なにしろ自分の記憶が曖昧だから
それこそ今日、初めて自分以外の人に打ち明けたよ」


「そうなんですか…

でも…
その誰かって、もちろん記憶ないんですよね?」

木村は頷く

「人がいたのは間違いないんですか?」

「夢じゃなければ…」と木村は言い、しばらく空を見ていた





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