ヘタレな彼氏と強気な彼女
1
キッチンからあがった悲鳴にあわてて飛んでいくと、一輝(かずき)がぶるぶる震えながら壁際に突っ立っていた。
「ちっ、千歳(ちとせ)~ゴッ、ゴッ、ゴッ……あっ、あれ!」
赤いチェックのエプロンを握り締めて、必死で助けを求めている。
身長だけは高いくせに、体を縮めて怯えている姿にいつもながらため息が出た。
「あーはいはい。あれね」
もう見当がついた例のあれを倒すべく、スリッパを片手に取る私。
「だっ、だめだよお! そのスリッパせっかく買ったばっかりのお気に入りなのに……!」
「いいじゃん、それぐらいぱっぱと拭いて使えば」
「うわー絶対やだ! お願いだからそこの殺虫剤使って!」
「まったく仕方ないなあ」
殺虫剤を使うと変なところに逃げ込まれたりするから、昔からの一番確実な方法でやっつけようと思ったのに。
頭の中で愚痴りながらも、私は真っ黒などでかいスプレーを手に取り、ヤツに向かって吹き付けたのだった。
「ちっ、千歳(ちとせ)~ゴッ、ゴッ、ゴッ……あっ、あれ!」
赤いチェックのエプロンを握り締めて、必死で助けを求めている。
身長だけは高いくせに、体を縮めて怯えている姿にいつもながらため息が出た。
「あーはいはい。あれね」
もう見当がついた例のあれを倒すべく、スリッパを片手に取る私。
「だっ、だめだよお! そのスリッパせっかく買ったばっかりのお気に入りなのに……!」
「いいじゃん、それぐらいぱっぱと拭いて使えば」
「うわー絶対やだ! お願いだからそこの殺虫剤使って!」
「まったく仕方ないなあ」
殺虫剤を使うと変なところに逃げ込まれたりするから、昔からの一番確実な方法でやっつけようと思ったのに。
頭の中で愚痴りながらも、私は真っ黒などでかいスプレーを手に取り、ヤツに向かって吹き付けたのだった。
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