この窓を飛び越えて…
――――「えっ?」
聞き間違いであってほしいと願うわたしの目の前には、香葉のニヤリ顔があった。
返事を聞く前から、まるでわかったような表情。
わたしは「………」と言葉をなくす。
別に、ずっと隠していく必要なんてない。
確かに香葉に言うとどうなるかわからないから―――って不安もあったけど、
教えなかった一番の理由はそれじゃない。
…これはわたしの初恋なるものだから。
だから―――香葉には言えなかった。
ずっと男が苦手で、香葉とか女子にしがみついて生きてきた。
香葉も香葉で、『莉桜はあたしのもの』とか言ってくれる。
もしもわたしに好きな人がいることを知ったら、香代はどう思うんでしょう……。
恋愛というものにまったく関心がなかったわたしはその知識も持っていない。
だから、それに対する親友の憧れや応援だなんてことがあるのも知らなかった。
香葉のわたしが“好き”と、わたしの『窓辺の人』への“好き”が違うということに気づかない。
香葉はわたしを好き。
わたしも香葉が好きだけど……そしたら二人の人を好きになるなんてこといけないんじゃないかな。
これはいわゆる、『二股』とかいうやつになってしまうんでしょうか?
そしてまた、そんなことを知った香葉はわたしを嫌いになってしまわないでしょうか?
そんな意味もわからない変な感情を抱いていた。