この窓を飛び越えて…
「……………」
「……………」
「……………」
「…分かった」
その声にわたしはパッと顔を上げる。
「言えない理由があるんだよね?」
「うん……」
「じゃああたしがいろいろ質問するからさ、それに答えてよ」
香葉の言葉に全身の縛りが緩んでいく。
魔法がかかったように楽になった。
「じゃあね〜」と、香葉が何から質問をするべきか考えていたときだった。
始業のチャイムがなり響く。
香葉はチッと舌打ちをしてわたしから離れた。
「もう…空気読みなさいよチャイム!」
そう言いながらも名残惜しげにちゃんと席に戻った香葉。
そんな香葉は微笑ましくて、わたしは笑いながら見送る。
開けた窓から強い風が吹いた。
窓に目を向けると、一枚の葉が飛んでいる。
何となく、手が届きそうな気がした。
わたしはほぼ無意識に手を伸ばす。
「あっ…!」
少しだけ触れたのに、スルリと手から抜け出す葉っぱ。
無性に悲しくなって、空になった手を握った。
「はぁ……」
わたしは一体、何をしているんでしょう……。
今ので一気に体力を使った気がして、だらし無く腕を下ろす。