この窓を飛び越えて…



下を見るとちょうど道が見えた。

十雪と九雪の間にある、一本しかない細い道が。

その両側には、この前わたしたち一年生が植えたパンジーがズラリと列を作っている。

そんな花たちを、ぼーっと見下ろしていた。



―――コンコンッ



え……??



ノックをしたような音。

聞こえたのは後ろからでも、隣でもない。
誘われるように、ゆっくりと視線を前にした。

いつもの窓が開いていて、そこから同じように顔を出していたのは…



「……っ!!」


“窓辺の人”でした。


その人はわたしと目があうとにやりと笑った。

そして指先で何かを器用にクルクルと回転させる。

集中して見つめると、その物体が何なのか分かった。
わたしは「それ…」と小さく声を漏らす。


“窓辺の人”が持っていたのは、―――一枚の葉っぱ。

季節外れの緑を魅せるそれは紛れもなく、


さっきわたしが取り逃したもので…。



葉と“窓辺の人”を交互に見る。


そんなわたしを見て勝ち誇ったようにまた笑う。



あまり、優しい人ではないのでしょうか――



そんなことを思ってしまうような仕種だった。




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